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行政書士試験と実務の関係性|行政書士実務の本質とは?
「行政書士試験に合格したのはいいけど、実際の仕事ってどうやるんだろう。このまま実務ってできるの?」
「試験に受かっただけで実際の仕事はしたことないけど、いざ仕事をするとなると、いったいだれが教えてくれるんだろう。」
こういった不安や焦燥感を感じるのは、とても自然なことです。(実は私もリアルタイムでそういった不安を感じています・・・)
当たり前のことですが、行政書士試験に合格しただけでそのまま実務が滞りなくスムーズに回せるかというと、残念ながらそういうわけではないようです。
その理由はシンプルで、試験と実務とでは、求められている事柄や必要となる知識量、ステージが異なるためです。
行政書士試験では、憲法・行政法・民法といったカテゴリを中心に、代表的な法律の基本的な構造や内容を理解し、判例学習を通じて、法律を具体的な事例に当てはめて検討する力が問われてきたと思います。
散々細かな文字で判例解釈を進めてきたことで培ってきたこの力は、顧客(以下、依頼者)の要望や背景を踏まえた上で、依頼者の求める依頼内容が法律上の要件に合致するか、依頼者が要望する申請などの手続きが適法に進められるものか、といった事項を的確且つ迅速に判断し、依頼者の要望に応えていくための“土台”になるものだと私は考えています。
一方で実務では、依頼者の置かれている状況や課題を具体的な事案として捉え、それに各種法令で定められている要件や基準を当てはめながら、どのように解決へ導くかを判断し、コンサルティングしていく力が求められる場面が多い、ということです。
こうしてみると、試験で試された“土台となる能力”は実務においても当然活かすべき能力であることは間違いないですが、ただしそれはあくまで「考え方や処理能力(ソフト面)」であり、それだけで実務を完結させるのは難しい側面もあると感じています。
実務ではそれに加えて、
- 各分野(入管手続、遺言・相続など)ごとに関係する各種法律の理解
(入管手続の場合:出入国管理及び難民認定法など) - 上記法律に加え、関連する省令・告示で定められている各種要件・基準の理解
- 行政機関ごとに存在する手続きルールや運用
- 同じ分野でも申請する内容ごとに分かれている要件の選択と理解
などといった「個別具体的な要件(ハード面)」の理解が不可欠になってくるということです。
どんなに数学が得意でも、計算する対象の値を知らなければそもそも計算能力を活かすことはできないのと同じで、実務においては、取り扱う分野ごとに存在する各種法令の中身の理解がなければ、行政書士として必要な判断を下すことが出来ず、仕事が低迷してしまうでしょう。
こういった理解の一つひとつをおざなりにしてしまうと、例えば依頼者から何らかの申請を相談された際に、その事案が、「適法に対応できる事案であり、受任して問題ないか」を適切に判断することができず、目先の報酬欲しさに申請上の基準や要件に合致しない顧客の案件を取り扱ってしまうことで、結果申請しても不許可となり、その後、依頼者との不要なトラブルを招くことになってしまうこともままあるようです。
引き続き、申請業務を例にとると、行政書士の業務において重要なのは、ただ依頼者に言われるがままに申請作業を代理するのではなく、
- 法令の要件に従ってその申請が適法に成立するかを見極め、
- 成立しない場合には、顧客の立場に立ち、その理由を踏まえて時に別の適法な選択肢を提示
することが求められる専門性にあるのです。
(※もちろん行政書士の仕事は申請業務だけではありません。上述はあくまで本記事上の説明として、主だった業務の一例を取り上げています。)
こういったことを押さえた上で行政書士デビューをすることで、
「行政書士に登録はしてみたけど、私実務のこと何も知らないじゃん・・・」
「初めて受任した仕事でお客様とトラブルになりそう・・・」
みたいな事態を減らすことにつながるのではないでしょうか。
では、業務の分野を絞って具体例を見てみます。
在留資格申請業務から見る行政書士実務に必要な思考力
例えば、日本で就労や滞在を希望する外国人の在留資格申請において、行政書士試験ではこの分野について、
- 外国人に「再入国の自由」が認められるか否か
- 外国人における日本国の在留許可申請に対する「法務大臣の裁量の有無」
などといった論点を学習してきたはずです。
これは、前者においては憲法における人権の「性質説」、後者においては行政法における「行政裁量」といった基本的な法的枠組みの理解が中心であり、試験では入管手続を「法律上の性質や制度としてどう捉えるか」を学んでいたと言えます。
一方で実務では、その基本理解を前提にしつつ、より具体的な要素の検討が必要になると考えられます。
在留資格の申請人となる外国人本人の立場に立ち、
— 申請人となる外国人の方が、現実に在留資格を適法に取得できるかどうか —
を具体的に判断する必要があるのです。
例えば、外国人就労者が日本国内の企業にて、専門性を武器にした頭脳労働に就労するために必要な在留資格である、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格申請について言うと、
- 日本の公私の機関との契約があり、外国所在の会社に雇われていないこと
- 専門的な知識を活かして働くホワイトカラーの頭脳労働であることが必要で、単純労働や肉体労働に該当しないこと
- 学歴(専攻)と仕事内容に関連性があること(学歴で申請する場合)
- 当該業務に関する実務の経験年数が基準を満たしていること(職歴で申請する場合)
- 学歴、職歴が基準を満たしていない場合、申請人の従事する業務が国際業務(通訳、翻訳、語学指導、広告、宣伝など)であり、これまでの職歴が必要な条件に合致していること
- 当該外国人(申請者)が受ける報酬が日本人と同等以上であること
などといった要件が法令で定められており、こうした要件の一つひとつに申請人の条件が該当するかを整理していくのです。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について詳しく知りたい方はこちら
ここで、新人行政書士が陥りやすいであろうケースを例示させていただきます。
<具体ケース>
ある企業からマーケティング業務に従事する内定を得た外国人候補者Aさんがいました。
Aさんは当初留学ビザで訪日しており、日本で就労するための在留資格を持っていません。企業の人事担当者はAさんを雇い入れるために「技術・人文知識・国際業務」の留学資格の申請手続きをBさんに依頼しました。
行政書士であるBさんは、その外国人が国内の有名大学を卒業していることことから、就労するに申し分ない資格を有していると判断し、必要書類を揃えて申請を行いました。ところが、入管の審査の結果、不許可となってしまいました。
一体なぜでしょうか。
そうです。蓋を開けてみると、その候補者が大学で学んだ専攻分野は、これから従事するマーケティング業務と関連性のない分野(ex.心理学など)であり、学歴と職務との間に合理的関連性が証明できない本ケースは在留資格の要件を満たさず不許可となってしまった、ということです。
このように、「十分な学歴がある」という事実だけでは要件を満たしたことにはならず、専攻内容と業務内容の関連性まで踏まえて検討する必要がある点を見落としてしまうと、結果として不許可になる可能性があります。
前述のとおり、この在留資格は、国内の企業において、専門的な知識を要する業務に従事することが前提とされているため、単に大学を卒業しているという事実だけでは足りず、その専攻と業務内容の合理的関連性が求められるとされています。
もちろん要件を満たしていないのは外国人就労候補者自身の適格性の問題ですし、企業も内定を出すのが早計であったかもしれません。
ですが、「本来申請すべきでない案件」を行政書士による「申請要件・基準に関する知識不足」により受任し手続きを取り扱ってしまったがために、依頼者や企業に大きな期待を抱かせ、結果不許可となったことで、早期に充足できるはずだったポジションに長期に穴が空いてしまうことのビジネス上の機会損失の発生や、ポジションの再募集をかけるための追加コストを要したりなど、目に見える影響が出る場合もあります。
外国人候補者の視点から見ても、やっと内定が決まり、就職活動を終えて就労の準備を整えていたさなか、もう一度就職活動を再開しなければならない痛手を被ることになります。
同じ法律を扱っていても、試験と実務では求められる要素の性質が異なるという点が、このあたりに現れていると感じています。
行政書士実務における判断ミスのリスクと責任
前述のとおり、行政書士の仕事は単なる書類作成にとどまらず、企業の採用や事業計画、外国人の就労や在留、個人の生活や将来など、重要な判断に関わる場面もあると理解しています。
特に在留資格申請といった入管手続においては、申請の結果がそのまま依頼者の今後のビジネス計画や人生設計に影響するケースも少なくないということです。
- 申請要件を満たしていない顧客の申請依頼の受任・申請の実施
- 顧客への事実確認の不足による誤処理
- 各種書類の不整合
などといったミスは、不許可を招くだけではなく、本来申請が許可されるはずだった事案が書類の不整合や行政書士の申請ミスにより不許可になることもあり、場合によっては企業や個人の機会損失から損害賠償等に発展する可能性もあり得るのでは、と考えます。
(これは在留資格申請だけに言えることではなく、行政書士の業務すべてに言えることでしょう)
さらに、行政書士の業務を行う上で気を付けなければならないポイントとしては、他士業の独占領域に意図せず踏み込んでしまうことによる法律や規定違反などがあります。
- 紛争性のある案件(弁護士領域)
- 登記など(司法書士領域)
- 確定申告書の作成や税務相談など(税理士領域)
- 社会保険、労働保険手続など(社労士領域)
- 不動産売買や賃貸の仲介、重要事項説明など(宅建士領域)
- 特許出願、実用新案、商標、意匠など(弁理士領域)
など
などといった他士業の領域に踏み込んでしまうと、業際問題に発展するリスクがあります。
せっかく試験に合格し、晴れて事務所を開設して受任に恵まれても、知識不足によって悪意なく法律違反行為を行い、挙句懲戒処分となってしまうことで事務所運営を停止、最悪の場合廃業せざるを得なくなったりすることもあるでしょう。
いきなり開業を目指すことも選択肢のひとつだと思いますが、私は一定の準備期間を設け、正しい知識を身に着けてから勝負に挑むことをおすすめしたいと思っています。
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実務を習得する方法とは?方法別にどんなよいところがあるの?
実務に必要な知見を付けることは、顧客にとって良い影響を及ぼすために必要な力であるとともに、自らのビジネスを安全且つ円滑に進めるためにも欠かせない力だと感じています。
こうした実務の力を鍛える方法としてはいくつかあるかと思います。主だったものとしては下記のような内容でしょうか。
- 実務書を用いた独学
- 先輩行政書士に教わる
- 登録後に行政書士会主催の研修で学ぶ
- 予備校の通信講座で学ぶ

ご覧の通り一概にどれが良いかは明言し辛いですが、あくまでの私の視点で、上のようなメリット/デメリットが存在しているかと思います。
上記を整理すると、「A.自分の学習ペースを維持したい」「B.学習内容を体系的・網羅的に理解したい」「C.コストパフォーマンスも重視したい」「D.行政書士登録後に知識不足であたふたしたくない」この4つの願望が見えてきます。これらすべてを満たす学習方法を見つけるのは一筋縄にはいきませんし、特に、試験合格直後で一息ついている段階では、どの要素を優先すべきか判断に迷う方も多いでしょう。
通信講座から考察する学習方法の方向性 – 伊藤塾とアガルートの比較 –
今回、上記の実務習得方法を踏まえ、これらの中から、講座内容や教材等にバリエーションがある通信講座について比較検討をしてみました。比較対象は、大手予備校である「伊藤塾」と「アガルートアカデミー」となります。
※下記比較は、筆者調査時点の情報に基づく主観的評価を含む目安です。

伊藤塾の考察
- 強み
- 歴史ある予備校なだけあり、プロの実務家の講義はもとより、アガルートアカデミーにはない「スクーリング」といった同業同士の横の関係性を構築できる手厚いサポートが充実している印象。開業後を見据えて人脈を築きたい方にはよい講座ではないかと思います。
- また、比較的高額なだけに、約9ヶ月かけてみっちり学ぶコースがあるなど、網羅的にじっくり実務を身につけたい方にはフィットすると思われます。
- 弱点
- 金額面のみを上げると、フルパックの価格においてはアガルートの5倍近い金額であり、費用負担が大きいと感じる方は一定いらっしゃるかと思います。
- 学習コストを抑えたいと思う方にとってはやや不向きとなる印象です
- (参考)コース一覧

アガルートアカデミーの考察
- 強み
- 1講座が税込1万円を切り、伊藤塾に比べて比較的安価。
- 安価ながらも、プロの実務家による講義の提供や、分野別の講座を1講座から受講できる柔軟性は、学習コストを重視しつつ自分のペースを崩さず独学と講座をハイブリッドに活用したい方には有効な講座設計に感じられる。
- 弱点
- あくまで伊藤塾と比較すると、全10講座の中に講座内容の実務に必要な要点を凝縮して提供している向きがあるので、人によっては、より細部まで網羅的に学びたい場合にはやや物足りなく感じる可能性もあるのではと考察。
- (参考)講座一覧

総評
どちらの会社の講座も目的次第で選択が分かれる印象ですが、費用をかけても細かな部分も逃さず丁寧にじっくり学びたい方は「伊藤塾」の受講選択であり、実務書を通じてじっくり学びながら、不明点を講義で補強する、「独学と併用する学習スタイル」に興味がある方はアガルートアカデミーが有効な選択肢となるように感じました。
個人的な見解では、アガルートアカデミーの行政書士実務講座/開業講座は、コストも含めて、上記で挙げた受講検討者が抱える4つの願望にアプローチできるポテンシャルの高い講座だと思います。
A.自分の学習ペースを維持しながら、
B.不明な点をそのままにせず、プロの講義にて体系的に学べ、
C.コスト面においても比較的優位性があり、
D.行政書士登録前にしっかりとした事前の準備が出来る
といった点で有効性のある講座なのではと思います。
下記にそれぞれの実務講座に飛ぶ詳細ページを冒せていただきますので、ご参考にされてください。
【広告】伊藤塾 – 実務講座の詳細 –
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【広告】アガルートアカデミー – 実務講座の詳細 –
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なお、本記事では主に「試験合格後の実務学習」を前提として取り上げていますが、行政書士試験そのものの学習を進めている方向けには、試験対策講座という選択肢もあります。
では、初学者向けの基礎講座から、記述・模試対策など幅広い講座が用意されているようです。ぜひ、ご参考にしてみてください。
<伊藤塾>
伊藤塾の行政書士合格講座
<アガルートアカデミー>
アガルートアカデミーの行政書士試験講座
まとめ
行政書士試験では、憲法・行政法・民法を中心とした法律の基本的な内容を基礎として、法律の主旨を適切に理解し、具体的な事例に当てはめる力を養ってきました。
一方で実務では、それに加えて顧客の背景や状況を整理した上で、各種法令で定められる具体的な要件や基準に照らし、各種手続き等の行政運用を踏まえ、申請可否の判断や、申請を成立させるための申請人に対する具体的な助言や構成力が実務家としての土台となる能力であることを書いてきました。
そして、これらの能力の有無によっては、顧客となる企業や個人の重大な計画や人生設計に大きな影響を与えてしまうリスクがあるということ。
さらには、そういったリスクが現実化した暁には、損害賠償を受けるリスクや、顧客に対する適切な対応が取れていないことから懲戒処分を受けるリスクなどに発展することで、自身の行政書士事務所の運営にまで影響を与えることもあるということを書きました。
私も含め、実務を学習していく皆様は、上述のようなリスクの存在に触れるたびに「このままで実務に入れるのか」と一抹の不安を感じるのはごくごく自然なことだと思います。
だからこそ、行政書士試験の合格は「ゴールではなくスタートライン」である、との位置づけで、私も皆さまとともに引き続き実務理解を深めていければと考えています。

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